車両


鉄道の進化を
リードするような車両を開発したい

メトロ車両株式会社(出向)

世木 智博Tomohiro Seki

2006 年入社

出身学部/理工学研究科機械工学専攻

新造車両や改造車両の設計、搭載する装置の開発を主に担っています。新造 改造車両のプロジェクトが立ち上がると、必要な性能や機能を定めて新たに開発する装置の仕様を企画し、製造を依頼するメーカーを選定して協業しながら形にしていくことがミッションです。現在は、グループ会社のメトロ車両(株)に出向し、他の鉄道会社の改造車両の設計や、保守部品の供給などを担当。業務遂行のために海外に出張する機会もあります。

入社5年目、自動列車運転装置の新機能開発と試運転調整に奮闘

東京メトロは、技術開発に対してとても意欲的な会社です。私は入社以来、15年近くにわたって車両の設計開発を中心にキャリアを重ねてきましたが、この期間、省エネルギーなモーター(永久磁石同期電動機)等の新技術導入に何度も関わる機会に恵まれ、鉄道技術者として大きく成長することができました。
20代の頃を振り返って一番印象に残っているのは、有楽町線のホームドア設置にともなう自動列車運転装置導入のプロジェクト。各駅の停止位置に列車を自動運転で停車させる装置の開発に携わりましたが、なかなか思った通りの位置・乗り心地で停車できずに苦労しました。特に、古い車両は搭載されているブレーキの応答速度が低く、メーカーや社内のいろいろな部署の方々と知恵を出し合い、試運転を何度も繰り返してプログラムを完成させました。また、ホームドアの整備をより早く推し進めるために、全24駅を5つの区間に分け、調整が終わった区間から順次ホームドアを稼働できる新機能を開発、プロジェクトを推進していきました。その期間中は本当に大変だったものの、それ以降、別路線のホームドア設置時にもこの機能が標準となったことが嬉しかったです。
一連の試運転が終了するたびにホームドアが設置され、お客様にとってより安全な駅に順次様変わりしていく姿を目の当たりにした時は、自分の仕事の意義を大いに実感し、苦労が報われる思いでした。こうして若いうちから大きなプロジェクトを経験できる機会に恵まれているのは、当社の魅力だと思います。

海外鉄道事業者への技術コンサルティングも経験し、さらに成長

東京メトロの技術系総合職は、社外に出向して貴重な経験を積めるチャンスもあります。私も入社9年目から2年間、東京メトロが出資している海外鉄道コンサルティング会社に出向し、新興国の鉄道会社への技術支援を担いました。そこでは、ブラジル、タンザニア、インドネシアでの保守改善や鉄道建設に携わり、たびたび現地へも出張。海外の鉄道事情を肌で理解し、日本の常識をそのまま当てはめるのではなく、その国にあわせたシステムを提案することに奮闘するとともに、国内外の多くの優秀な方々との交流で刺激を受け、自分の幅を大きく広げることができました。
そして出向から戻った後は、改造車両の設計・製図を行う部署を経て、再び車両の設計開発を手がける部署に所属し、国内外のメーカーとの技術開発や半蔵門線に新たに導入される新型車両18000系の調達を担当することに。車両全体の仕様を企画してメーカーを選定するところから関わり、時にはヨーロッパ中のメーカーを訪問しながら、設計をリードするポジションで力をふるいました。この新型車両で実現したい安全性能や省エネルギー性能などの目標を定め、モーターなどの装置のスペックを検討。東京メトロのこれからのモデルとなり、50年後も第一線で活躍し続ける車両をつくりたいと、懸命に知恵を絞って設計値を定めていきました。

新しい技術に絶えず挑戦していく。それが東京メトロの真骨頂

新造車両の開発にあたっては、車両部長をはじめ、部内の各セクションの責任者が参加する「技術審査会」が開催され、そこで重視すべき仕様が決定されます。この18000系についても私をはじめプロジェクトのメンバーが企画した仕様を、この場に提出して検討。技術審査会というと厳かなイメージを持たれるかもしれませんが、上司も含め出席者は技術者としての豊富な経験をお持ちの方ばかりなので、「この技術は面白いね」といった技術談議に大いに花が咲き、「是非導入しよう」と後押ししてもらえることが多いです。東京メトロの技術部門は、鉄道技術を究めて新しいことに挑戦する意欲に溢れた人間の集まりであり、こうした風土でお互いに認め・励ましあいながら設計・開発ができることを、私はたいへん気に入っています。
この新型車両を世の中に送り出した後に、再び出向の機会を得て、現在はグループ会社のメトロ車両(株)に在籍しています。ここでは、東京メトロの路線を走る車両ではなく、国内外の他の鉄道事業者向けの車両開発を手がけています。 東京メトロとは異なる各国・各鉄道会社の文化や設計思想等を学ばせて貰いながら、東京メトロだからこそ若手のうちから得ることができた経験を活かして、各鉄道会社様にご満足いただける車両を提供することを目指しています。
将来は、これまでの多様な経験を活かし、多くの関係者と協業して世界一の通勤車両、そして世界一のメンテナンス技術をつくり出したい。さらに、これまで培ってきた技術やノウハウを国内外に展開し、完全無人運転などの技術開発にも挑み、鉄道業界全体の進化に貢献できればと考えています。

※記載内容は取材当時のものです

一覧に戻る