Project 02


新たな価値の創造

東京メトロは現在、グループの経営資源を活用しながら社会の変化を捉えた新たな事業に積極的に取り組もうとしています。ここでは、新たな価値を創造し社会に提供していくための体制強化や制度運営に取り組む社員、さらにはオープンイノベーション推進のためのTokyo Metro ACCELERATOR(東京メトロアクセラレーター)や社内提案制度「メトロのたまご」に自ら志願して新規事業の創出に挑む社員に、それぞれの取り組みについて話してもらいました。

新規事業創出 企業価値創造部 新規事業企画担当

森 信治 SHINJI MORI

2014年入社
外部の企業との共創によって
東京メトロの新たな未来をつくりだす

新規事業の創出に向けて、私たち企業価値創造部新規事業企画担当が推進するのは主として3つの取り組みです。1つ目は、アクセラレータープログラムの運営。これはオープンイノベーションにより、東京メトログループが保有する経営資源と外部のスタートアップ企業などが持つアイデアや技術とを組み合わせることによって、新たな事業を共創していく取り組みです。2つ目は社内提案制度である「メトロのたまご」の運営です。この制度は、新規事業への挑戦を通じてさらなる企業価値の向上を目指すこと、そして、提案者本人の施策実施への関与によって、チャレンジングな企業風土をつくり上げることを目的にスタートしました。職種に関係なく全社員を対象に新規事業のアイデアを募集し、提案者と一緒になってアイデアをブラッシュアップしていきます。アイデアの採択後にはその事業の実現・運営を支えていきます。3つ目は、私たち自身が発案者となって、新規事業の立ち上げ、推進を担うこと。これまで、キッズスペース併設ワークスペース「room EXPLACE」、子ども向けロボットプログラミング教室「プログラボ」、駅構内個室型ワークスペース「CocoDesk」が発案され、事業化されています。
その中で私が主に担当しているのは、アクセラレータープログラムの運営です。まず、社外から新規事業の構想を募集するにあたって、どんな企業を対象にどのようなテーマで募集するかというプログラム自体の検討から着手します。さらに特設サイトの開設などによるプロモーション活動を行い、提案いただいた共創アイデアを精査して審査会に進む企業を絞り込みます。その後、自薦による社内コーディネーター、提案企業と共に提案内容のブラッシュアップを重ねていきます。そして提案企業とコーディネーターが審査会でのプレゼンに臨み、最終審査を経て選ばれた企業が実証実験に進み東京メトロともに事業化に向けて動き出すことになります。

共創事例を積み上げることだけでなく
多くの出会いの場を創造すること

私たちが検討を重ね、助言しながら支えていく共創案の一つひとつが、東京メトロの持続的な成長につながっていくことを思うとやりがいを感じます。しかしながら審査を通過して経営層の承認を得て着手される事業のすべてが、社会に受け入れられるとは限りません。その後も乗り越えるべきハードルがいくつも存在するため、共創の実現まで困難の連続です。しかし一方では、スタートアップ企業の方々の意思決定のスピードや実行力、人間的な魅力を肌で感じ刺激を得られることも現在の仕事の醍醐味であり大きな魅力であると思っています。
これは私個人としての考えなのですが、アクセラレータープログラムの目指すべきゴールは、自然発生的に社外との共創が生まれるようになり、いつしかオープンイノベーションのためのプログラムの必要性を失うことだと思っています。アクセラレータープログラムにおいては、これまでのように限られた企業とだけ一緒に仕事をするのではなく、スタートアップ企業などこれまでに一緒に仕事をする機会のなかった企業との出会いの場を創造していくことにも価値があると思っています。この活動を通じて、たとえば共創事業のブラッシュアップを経験したコーディネーターたちが、それぞれの部署で各事業の新たな可能性を求めて新たな取引先を開拓していこうとする。目の前の課題解決のために、斬新なアイデアや独自の技術を持つ方々と積極的に手をつないで協業の道を探り改革を進めていく。そんなオープンマインドを持った社員を増やしていくことが、東京メトロの新たな未来を創造することにつながっていくと期待しています。

Tokyo Metro ACCELERATOR (東京メトロアクセラレーター) 鉄道統括部 管理課

川尻 明 AKIRA KAWAJIRI

2016年入社
eスポーツという新たな市場の可能性に
魅せられ、志願して共創提案を支える

東京メトロが保有する経営資源とスタートアップ企業のアイデアを組み合わせ新たな価値を共創することを目的としたオープンイノベーションプログラム「Tokyo Metro ACCELERATOR 2019」に、コーディネーターという役割で参加しました。このプログラムでは、協業パートナー企業を募集し書類審査や面談によって最終審査に進む企業を選定するまでをその運営を担う企業価値創造部が行います。この面談には、コーディネーターの同席が許されていたので、私もいくつかの企業との面談に同席させていただきました。
その中で私が最も可能性を感じた提案は、東京メトロ沿線にeスポーツジムを開設し、共同運営によってeスポーツの裾野拡大を図るというゲシピ株式会社のものでした。しかし、面談でeスポーツの市場規模や今後の成長予測について熱く語る社長の言葉に共感を覚える一方で、その中で東京メトロの果たすべき意義が見出せませんでした。だからこそ、両社が協業することの意義を明確にすることができれば、この事業の新たな可能性がもっと広がるとともに、東京メトロの更なる成長に貢献できると考えました。
コーディネーターとして共創提案を再検討しブラッシュアップしていく中でも、この提案の魅力や輝きが決して色褪せることはありませんでした。茨城県で全国初となる都道府県対抗のeスポーツ選手権が開催され、オリンピックの正式種目としての採用が議論されるなど、eスポーツは全世界的な広がりを見せています。これに呼応して、その裾野拡大を担うeスポーツジム(コーチングを含む)の存在は、今後ますます注目されることになるはずです。こうした市場の可能性について、効果的に伝えられるよう検討を深めていきました。

コーディネーターとして共創に取り組む
機会そのものにこそ価値がある

最終提案に向けた準備の中で最も時間を要したのは、私が当初から懸念を抱いていた「東京メトロと協業することの意義」について明確にするという課題でした。「他社とではなく、なぜ東京メトロとこの事業を実施したいのか」「東京メトロと協業することで生まれる価値は何か」「それは両社の成長につなげることができるのか」といった観点で、双方のコンセンサスが取れるまで、徹底的に議論を尽くし事業の最適な姿を描いていきました。東京という都市で事業化するからこその意義や、東京メトロの路線ネットワークを活用した面展開の構想を視覚的にアピールできるよう準備を進めました。
最終プレゼンの結果、審査を通過し、共創に向けたスタートラインに立つことができました。コーディネーターとして最低限の役割を果たすことができましたが、私には引き続き共創内容の実現に向けて貢献していきたいという強い想いがありました。最終審査後の関わり方については、コーディネーター自身が選べるため、企業価値創造部の担当者と共に事業化にむけて支えていくことを選択しました。eスポーツ施設の運営に関して法律や制度面で未整備の部分が多く、現在は関連機関との協議を行うなど事業環境を徐々に整えながら、1号店の開設に向けた下準備を行っているところです。
スタートアップ企業のトップと真剣に議論し共創提案の将来性について考えるという機会そのものに価値があると思っています。大きな夢と戦略を持って新たな事業に真剣に取り組む企業と正面から向き合って議論する中で、日常の担当業務だけでは得られない多くのことを経験し、学ぶことができました。また、コーディネーターとして果たすべき役割や行動についての成功シナリオがあるわけではありません。だからこそ、提案内容のブラッシュアップの方法においてもゼロベースから自由に考えることができました。それは私自身の実力を試す場でもあり、自信を得て成長にもつなげることができた貴重な機会であったと思います。私自身がそうであったように、多くの若手社員がこのプログラムに参加することで、日常業務における思考の幅や行動を起こす際の選択肢を広げることができるのではないかと考えています。

メトロのたまご ICT戦略部
ICT推進・サイバーセキュリティ担当

横溝 大樹 DAIKI YOKOMIZO

2015年入社
「情報をお手元に届けるまで」を意識して
子育て世代が抱える悩みを解決する

社内提案制度である「メトロのたまご」を活用し、「ベビーメトロ」というWebアプリの開発を提案しました。この提案のきっかけとなったのは、妻の何気ない一言でした。当時、子どもが生まれたばかりで、都心へ出かける際には、ベビーカーに子どもを乗せて移動していました。地下鉄の駅構内で近くの案内表示を見ながら移動するのですが、迷うことが多かったようです。ある日「駅の案内がわかりづらいね」と言われて、とても残念な気持ちになりました。そして、妻と同じように困っている人たちの救いになるような施策を考えて提案しようと思ったのです。
提案内容が評価されアプリの開発に着手することになるのですが、当初案で私が目指していたのは妊娠中や出産したばかりのママさんをターゲットとして、必要な情報を幅広く提供できるポータルサイトのようなものでした。しかし検討を重ねる中で、提供情報が多すぎても、駅のサインシステムのわかりづらさの改善にはつながらないことがわかりました。そこで、より情報を絞り込んだプロトタイプのアプリをつくり、出産経験のある8名の方々を集めて試用していただきました。また、子育て世代の方へのアンケート調査も行った結果、一番知りたいのは、エレベータの位置情報であることが判明したのです。
その後もさまざまな検討を繰り返し、そもそもエレベータはどうして必要なのかという深層にまで踏み込んだ議論も行いました。最終的に「ベビーメトロ」では、「あの駅、ベビーカー大丈夫かな?」という疑問に対して、〇△×というシンプルな形で、あえてエレベータなどの設備が無いという情報も含めて結果を表示することで、駅を利用する際の不安解消につなげています。駅にはエレベータが設置されていないというマイナスの情報であっても、それを事前に確認することができれば利用者にとっては有益な情報となります。エレベータのない駅の利用を避けることもできますし、駅係員への補助を依頼する心構えができるからです。こうして焦点を絞り込むことで、目指すべき方向を見定め、「ベビーメトロ」を熟成させていくことができました。

「お客様に安心をお届けしたい」という
社員一人ひとりに根付く気持ちに支えられて

こうして完成させた「ベビーメトロ」は、トップページで駅名や路線名またはお客様それぞれの履歴から調べたい駅を選択するだけで、ベビーカーで移動するお客様が必要とされる駅の情報を表示することができます。地上からホームまで「エレベータのみ」で移動できるのか、乗り換えが「エレベータのみ」で可能なのか、ホームにベンチがあるか、おむつ替えスペースまでエレベータのみで行けるのか、エレベータ出入口がどこにあるのかといった情報を、〇△×の表示を中心にシンプルでわかりやすく確認できるアプリとなりました。
公開当初から「このようなサービスを待っていた」「自分がベビーカーを利用していた時代に欲しかった」など、多くの貴重なご意見をいただきました。いただいたご意見を、今後の運用改善や新施策の検討に活かしていきたいと考えています。また、2018年にグッドデザイン賞を受賞することができましたが、これは発案者である私を支え、実現にむけて助言くださるなど、共にアプリ開発に力を発揮してくださった「ベビーメトロチーム」に対する評価であると感じています。
私が一個人として感じた課題意識からスタートすることになった「ベビーメトロ」のプロジェクトでしたが、その意志を貫き、さまざまな関係者と協力し合いながら、前向きに取り組み続けることができました。企画提案の時点では、描き切ることができなかったサービスイメージを、各部の関係者をはじめ多くの人たちと交流を重ねることで議論を深め、より良いサービスへと昇華させていくという手応えを味わうこともできました。こうした経験ができたのは、東京メトロの社員一人ひとりに根付く「お客様に安心をお届けしたい」という気持ちがあったからこそだと感じています。そのことに気づけたことも私にとっては大きな収穫でした。