Profile

地理学を専攻し、人やモノの動きが土地にどのように影響し、それぞれの土地の特性が人やモノにどのような影響を及ぼすのかを学んだ。人の動きという点で注目した運輸業界。なかでもヒートアイランド現象の研究で有楽町線各駅の気温分布調査にご協力いただいた会社が最も身近で入りたい会社になった。

石原 佐智子SACHIKO ISHIHARA

電気部 相互利用・駅務システム担当部長/
株式会社パスモ 取締役
地理学科卒 1991年入社

Leader Interview 02


方向を定めて、走る


石原 佐智子SACHIKO ISHIHARA

電気部 相互利用・駅務システム担当部長/
株式会社パスモ 取締役
地理学科卒 1991年入社

失敗しても、否定されても、拒絶されても、けっして挫けない。
それを乗り越えようとする粘りと着想が、理想を叶えてくれるから。

新線建設に向かう重要局面の一端を担う
新線建設に向かう重要局面の一端を担う

当時の営団地下鉄(帝都高速度交通営団)に入って最初に携わることになったのが、建設本部計画部での路線計画担当としての業務でした。半蔵門線(水天宮前 - 押上間)および副都心線(池袋 - 渋谷間)の鉄道事業免許を取得するために、関係省庁に説明に出向き、沿線の関係者の方々との協議・調整に行きました。
東京圏の交通網整備については、マスタープランが描かれ、それに則って地下鉄の整備を行うことが定められており、この計画を実行に移すためには、沿線地域との調整によって路線計画を確定した上で免許を申請する必要があります。新入りで右も左もわからないような状態でしたが、新線建設に向かう重要局面を乗り切るために活動する先輩たちの背中を見て、多くのことを学ぶことができたと思います。
学生時代に私は、オリエンテーリング部に所属し、主催する大会の運営準備のために、開催地の自治体や地権者、協賛企業と交渉し、地元の警察や消防に協力を仰ぐような経験が沿線の関係者の方々との話し合いの場面で、積極的に足でかせいで物怖じせずに対処することに、活かすことができたと思っています。
その後、運輸本部の計画部計画課で運賃制度および運賃改定の業務を経験し、人事部厚生課では、福利厚生業務全般を担当。新たな福利厚生制度の導入検討にも携わりました。

東京地下鉄株式会社として新たなスタート

総務部文書課では、私のキャリアの中でも最も長い、6年10ヵ月を過ごしました。帝都高速度交通営団から東京地下鉄株式会社へと経営形態が変更されるときで、株式会社としての組織や会議体のあり方、規程類を再構築する必要がありました。たとえば取締役会や経営会議は、営団時代にはなかったもので、それらをどのように整備すべきかについて議論を尽くしました。
また、会社名、愛称、シンボルマークなどの制定は、社外に向けて最もわかりやすく変化を伝えるものとして重要でした。私はそれらを決める事務局として、社内の意見調整を行いました。たとえばシンボルマークについても多様な意見がありました。斬新なアイデアも出ていて、それを推す声もありました。私たちは「長く愛されるマークを考えたらどうでしょう」と提案し、メトロのMを図案化した現在のマークを決定しました。着地点が見つからず困惑する場面もありましたが、未来志向の取り組みなので、いま振り返れば楽しい議論だったと思っています。
2004年4月に、東京地下鉄株式会社が誕生。その翌年から営業部営業推進担当として、旅客誘致活動に取り組むことになりました。民営会社となって、それまでのような受け身の姿勢ではなく、積極的にマーケットに打って出ていくためにつくられた部署で、PR活動やイベントの実施などを主に担当しました。直ちにお客様のご利用を促すものではなくても、東京の魅力発見を促すものであれば、お客様は東京メトロを利用して出かけてみようという気分になれるはず。そんな想いで企画したのが、都内のウォーキングイベントでした。メンバーたちと実際に歩いて、紹介すべきスポットを決めていく作業は、地図を片手に歩くのが好きな私にとって、楽しい企画でした。

鉄道事業の最前線で学び、得たこと

営業部審査課では、運輸収入を管理する業務を担当しました。予算、決算、日計管理のほか、PASMOの導入によって、運賃収受システムの主軸がICカードへと移行する時期で、正しい運賃を適切に収受することができるか、それを会社として管理して決算まで持っていけるのかを検証しました。さらに、副都心線が開業を迎え、各駅の需要予測も行いました。
次の霞ケ関駅務管区長として11駅をマネジメントしたことは、私自身のマネジメントスタイルを確立することができた貴重な経験だったと思っています。東京メトロの大きな収益源である鉄道事業の最前線で働くというのはどういうことなのか、お客様の動き、その日その場所で起きるピンポイントの事象にどのように対応しているのかを日々目の当たりにしながら、そこで働く社員一人ひとりが能力を発揮し成長していくためには何が必要なのかを考え実践していきました。
霞ケ関駅務管区は200名を越える社員が勤務する大所帯。全員が同じ方向を向き、価値観を共有すべき点とそれぞれの個性を発揮すべき点とを切り分けてマネジメントすることが必要だと思いました。あまねくすべてのお客様に安全・安心、そして快適にご利用いただける輸送サービスを提供しなければなりませんが、組織内の活動では、それぞれの個性、得意不得意を理解して、それぞれがやりたい方向を可能な限り伸ばしていくことに力を注ぎました。
鉄道統括部お客様サービス課では、CS推進活動、お客様への個別対応、お客様センター(コールセンター)の監督業務を経験しました。5年間の在籍期間に寄せられた数多くのお客様の声はそれぞれ、鉄道サービスを提供する上での非常に重要な提言だったと思っています。

いまこそ、東京を走らせる力になるとき

現在は、電気部の相互利用・駅務システム担当部長として、自社が保有する出改札機や券売機などの駅務機器の整備更新に関する業務、 PASMO協議会等外部組織の運営にも携わっています。またPASMOサービスの運営管理を担う株式会社パスモの取締役として、PASMOサービス改善等の施策を確実に遂行する立場でもあります。
PASMO協議会は、さまざまな経営環境にある事業者の集合体であり、自社の考えのみを主張するのではなく、協議会全体の利益を最優先にする姿勢で臨んでいます。これは何よりPASMOをご利用になるお客様に対し、利便性の高いサービスをシームレスかつ安定的に提供するために必要なことであると考えるからです。
とはいえ、事業者ごとに異なる立場、考えがあり、時として協議会として進むべき方向も、目標も見定めるのが困難なこともあります。理想である全体利益を追求と個々の事業者の考え方や事情といった直面する現実をうまくバランスをとりながら進めていくことの大切さを痛感する昨今です。オリエンテーリングの語源は「方向を定めて、走る」。若い頃は方向を定めたら、藪漕ぎもいとわず突っ走りがちでしたが、今は少し回り道をしても周囲の状況をみながら走ることを心掛けるようになりました。事業者毎にアプローチの方法は異なっても、お客様により良いサービスを提供しよう、というゴールは同じなのです。
ウィズコロナといわれる時代、人々のライフスタイルや働き方が大きく変化しようとしています。私たちはこれまで、主に人々の移動手段としての価値を提供することで事業を継続してきました。しかし移動すること自体が目的ではなく、人に会い、仕事をする、観光することが本来の目的です。今後、人々の移動する目的が変化していくのなら、自分たちでお客様を獲得する努力が必要になります。人々の動きを生み出す新たな取り組みや東京がもっと人々を惹きつけられるようになる仕掛けを、地域やパートナー企業と連携して生み出していかなければなりません。
まさにいま「東京を走らせる力」が求められているのです。